【年間300冊】漫画ヲタクがおすすめする少女漫画

少女漫画に貢ぎ続けて早18年。本職は編集っぽいことをやっています。

【もはや芸術】僕に花のメランコリー(小森みっこ)

高校生の花は、ある日不良の喧嘩に巻き込まれてしまう。そこで出会ったは1人の少年。花は彼の瞳を見た瞬間に初恋だった男の子、弓弦だと気づく。しかし幼く純粋だった当時の弓弦の面影はなく、全くの別人のように精神的に荒れてしまっていた。それでも花は、小さい頃には守れなかった「ずっとそばにいる」という約束を果たそうと弓弦の傍にいることを決心する。

繊細すぎる絵

私が小森みっこ先生の作品を初めて読んだのは『乙女Holic』だった。その時に「なんて繊細に絵を描くんだろう」と感じたことを今でも覚えている。もともと種村有菜先生の大ファンだった私は、種村先生のような絵の繊細さに一気に魅了された。その繊細さは小森先生のデビュー作『ひみつのすき』からずっと続いている。余談だが、『ひみつのすき』が収録されているオムニバスの『KISS』はとても面白いのでぜひチェックしてほしい。

 

髪の毛1本1本まで丁寧に描かれている小森先生の作品。特に現在連載中の『僕に花のメランコリー』では、精神的に不安定な弓弦の心情が瞳の描写だけでよく分かる。花を徐々に受け入れていくにつれて、瞳が澄んでいくのだ。

キャラクターの設定の良さ

主人公である花は、素直で優しく、親孝行で弟の面倒見も良い。とにかく優等生だ。読者は典型的ないい子を「こんな子いないわ!」と敬遠するが、花の場合、嫉妬や自分の醜い感情に動揺する姿などのマイナス面が随所に表現されるため、花を自然と受け入れてしまう。完璧な人の未完成な部分を見ると、一気に親近感が沸くのだ。

 

そして弓弦。弓弦はとにかく百戦錬磨の完璧なイケメンとして描かれている。顔も良くて、頭も良く、スタイルも良い。しまいには喧嘩も強い(漫画内では喧嘩の強さがプラス面として受け入れられやすい)。そんな弓弦が抱える心の傷。「私がどうにかしてあげたい!」と母性本能をくすぐる設定だ。また、チャラい男性が一途に1人の女性に惹かれていく様子は、少女漫画好きにはたまらない設定の一つに挙げられる。

このように完璧なようで未完成な2人の恋の行く末に、読者はどんどんのめり込んでしまうのだ。

 

 

もはや芸術

『僕に花のメランコリー』は、とにかく壊れそうな恋愛模様が魅力的だ。一度でもすれ違ったら二度と元には戻れないのでは、と思わせる2人の距離感をもどかしく感じてしまう。それは小森先生が描く絵のタッチから感じさせるのかもしれない。もはや芸術レベルの作品。絵だけみても十分楽しめる作品なので、ぜひ一度読んでみてほしい。現在『マーガレット』にて連載中だ。